深呼吸で記憶力を向上させる
ここで、具体例を挙げてご紹介したいと思います。55歳の主婦Kさんは、最近、物忘れが多くなってきたことを気にしていました。
「2階の寝室から1階の居間に爪きりを取りに行ったのですが、階段を下りている間にそのことを忘れて、あれ、何をしようとしてたんだっけと首をかしげたり、電池を買いにコンビニエンスストアに行ったのに、店に着いたときには何を買いに来たのか忘れてしまい、結局、何も買わずに帰ったりしたこともありました」
同年代の友人にそのことを話したところ、年をとったらその程度の物忘れは誰にでもあると、笑い飛ばしてくれたそうです。それを聞いて、Kさんも少し安心したとのことです。ところがある日、Kさんを不安にさせる出来事が起こりました。
「財布が見当たらず、家族を巻き込んで大騒ぎをしてしまったのです。結局、財布は台所の棚の上にありました。私が自分で置いたのは間違いないと思うのですが、その記憶が全くないのです。このときは、さすがにちょっと落ち込みました」
もしかしたら、このままどんどんボケていってしまうのかもしれない。そんなことを考えていたとき、Kさんは雑誌で、「ゆっくり深呼吸」に関する記事を目にしました。
「脳では、海馬という器官が新しい記憶を受け持っていて、ここが衰えると物忘れがひどくなってしまうのだそうです。私も、つい最近のことをよく忘れるので、もしかしたら海馬が衰えているのかもしれないと思いました」
強い関心を持ったKさんは、その記事で紹介されていた「ゆっくり深呼吸」を試してみることにしたそうです。
「最初のうちは時計を見ながらやったのですが、1分間に4回の呼吸というのは、かなり少ない回数だということがわかりました。初めは苦しかったのですが、しばらく続けていたら気持が落ち着き、普段のストレスから開放されるような感じがしました」
Kさんは、5分間ほどのゆっくり深呼吸を、1日3回行いました。だんだんコツがわかってきて、数日後には時計を見なくてもできるようになったそうです。
その後、Kさんはあることに気づきました。
「明らかに物忘れが減ったのです。物の置き場所を忘れて、あわてて探し回ることがなくなりました」
おしゃべりをしていても、以前はよく口にしていた「えーっと、何だっけ?」「あれですよ、・・・あれ」といった言葉が出なくなったそうです。
「買い物に行っても、必要な品物がスムーズに思い浮かぶようになったし、スーパーのどこに何が置いてあるかも、完全に頭に入りました」
買い物にかかる時間が、以前と比べて20分ほど短くなったというKさん、家事の手際もよくなり、家族に驚かれているそうです。
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